専門外来のご案内
褥瘡・潰瘍外来では寝たきりや車椅子の患者さんに多く見られる床ずれ(褥瘡)や治りにくい潰瘍(難治性潰瘍)を専門的に診察・治療しています。
褥瘡は本人にとっても介護や処置をする方にとってもストレスとなります。感染のリスクもありますし、潰瘍が長期にわたって存在すると癌が発生する可能性もあります。また、褥瘡があることで転院や施設への入所が難しくなることがあります。褥瘡・潰瘍外来では患者さんごとに難治性潰瘍の原因を推測し、患者さんごとの環境や事情を考慮しながら治療方針を一緒に考えていきます。
骨の出っ張った部分の皮膚が固いベッドに寝たときなどに圧迫され、皮膚の血流が長時間途絶えると皮膚は腐ってしまいます。これを「褥瘡」と呼びます。
難治性潰瘍とは褥瘡を含めた治りにくい潰瘍のことです。概ね3〜4週間改善傾向の見られない場合に難治性潰瘍と呼ぶことが多いです。
褥瘡が発生しやすい要因としては、様々な理由で患者さんがあまり動けない状況や、圧迫されてても気づかない状況、やせ、関節拘縮、むくみ、皮膚の摩擦・ずれ・蒸れ、栄養不良、固いベッドや介護力の不足などが挙げられます。
難治性潰瘍の原因としては褥瘡だけでなく、外傷や熱傷、縫合不全の他、動脈に問題のあるもの、静脈に問題のあるもの、神経に問題のあるもの、血管炎、膠原病、血液疾患、感染症、悪性腫瘍など多岐にわたります。
褥瘡の治療は大きく保存的治療と外科的治療に分けられます。
どちらにしても創部そのものの治療(局所治療)の他、圧迫やズレを取り除くことや栄養状態の改善を並行して行います。ここでは局所治療についてご説明をいたします。
保存的治療では主に(1)壊死組織の除去、(2)感染の制御、(3)肉芽の形成、(4)上皮化の促進を目指して治療を行います。そのために下記治療法を滲出液の量やポケットの有無なども考慮しながら適宜選択します。
a)壊死組織の切除
死んだ組織(壊死組織)が付着していると肉芽形成や上皮化の妨げになったり、感染の原因になったりします。ベッドサイドや外来で壊死組織を切除したり、小さな匙で創面の細かい壊死組織を除去したりします。外用剤で壊死組織を溶かすこともあります。
b)外用剤
外用剤は主剤(薬としての部分、スープで言えば具材)と基剤(ベースとなる部分、スープで言えば液体部分)で構成されます。主剤は薬の効果を考えます。基剤は油っぽい、水を吸いやすいなどを考えます。外用薬を適切に選択することで薬効の他に滲出液をコントロールし、創面にとってよい湿り具合(湿潤環境)を調整します。
c)被覆材
被覆材は創傷に当てる貼りものです。ポリウレタンフォーム、ハイドロコロイド、ハイドロファイバーなど様々な素材があります。水を吸いやすいか、保水をしやすいかなどを考え、創面の滲出液をコントロールし、湿潤環境を調整します。
d)局所陰圧閉鎖療法
創部にフォームやコットンを当てて密封しながら創部を吸って陰圧をかける治療法です。過剰な滲出液を吸い上げ、創部の収縮や肉芽形成を促します。
e)投薬
感染がひどかったり深かったりする場合には抗生剤を投与することもあります。また、漢方薬などを内服してもらうことがあります。
a)皮膚切開術
褥瘡の周りに皮膚の浮いている状態はポケットと呼ばれ、ポケットがある場合は褥瘡が治りにくくなります。そこで局所麻酔をしてポケットを切り開くことで褥瘡の内腔を開放することが多いです。特に感染を伴うポケットは速やかに切開をする必要があります。
b)皮弁術
褥瘡のリスクの高い患者さんは褥瘡が治りにくく、治った後も再発しやすいという特徴があります。特に深く広めの褥瘡に対してはと皮膚の移動術(皮弁術)をご提案することがあります。ご高齢の患者さんでは局所麻酔で行うことが多いです。皮弁術のメリットは短期間で褥瘡を閉鎖できること、瘢痕として治ったキズ痕と比べて厚くしなやかな皮膚を移動するため術後の褥瘡再発のリスクが低くなることが挙げられます。それでも除圧などの褥瘡予防は原則的に継続していただくことになります。
難治性潰瘍は褥瘡治療のような局所治療の他、その原因に準じた治療を行う必要があります(血行再建など)。褥瘡だということで受診された際に他に原因があることもありますので、潰瘍の診察は注意深く行う必要があります。
褥瘡や難治性潰瘍でお悩みの患者さんを取り巻く環境は様々ですので、治りにくい潰瘍がございましたら是非褥瘡・潰瘍外来を受診していただき、患者さん個々にあった治療法をご提案する所存です。