専門外来のご案内
病状と手術の目的
唇に割れ目があり、鼻は変形した状態です。唇・鼻の形態を整え、口唇の正常な発音・摂食(食事)の機能が得られるようにします。
手術の方法
完全唇顎口蓋裂(口蓋裂と顎裂を合併している)の場合などで、鼻の変形が強い場合は生後間もなくから術前までの間に、NAM(Nasoalveolar Molding)という矯正装置を口と鼻に装着することがあります。生後3-6ヶ月くらい、体重6kgを目安に全身麻酔で手術を行います。様々な手術法が存在しますが、片側の場合は主にMillard+小三角弁法で手術を行います。両側の場合は主にMulliken変法で手術を行います。これらの手術法は国内外で最も普及している標準的手術法です。鼻の変形が強い場合には鼻孔内を切開して軟骨の移動や余剰皮膚の切除などを行います。
手術後
術後早期は、口の創部の安静のため鼻から胃内に挿入した栄養チューブからミルクを注入します。その後に経口哺乳を始めますが、退院後も術後約数週間は乳首ではなくシリンジ(注射器の針をはずした部分)でミルクを注入します。
外鼻の矯正目的に術後数カ月間はレティナ(retainer)というシリコン製の矯正装置を鼻孔に挿入しテープで固定します。
★修正手術について
成長に伴い、口唇外鼻の変形が強まった場合に修正手術を行います。日本口蓋裂学会のアンケート調査によると、成人までの手術回数は平均2.7回という報告があります。
病状と手術の目的
口蓋(口の天井)に割れ目があり言葉や食事が鼻から漏れるため、言語・摂食(食事)の機能が不十分な状態です。口蓋を動かす筋肉を縫合することにより、口蓋の動きを再建し鼻咽腔閉鎖機能を改善します。
★鼻咽腔閉鎖機能とは?
のどや軟口蓋の動きにより鼻咽腔を閉鎖して口腔と鼻腔を分離する機能です。口蓋裂では口蓋に割れ目があり、口蓋を動かす筋肉の動きも悪いため鼻咽腔の閉鎖が不十分で、言語や食事、ミルクが鼻から漏れる症状があります。
手術の方法
術前は口蓋裂専用の乳首を使用しますが、哺乳がうまくいかない場合は生後間もなくから術前までの間に、Hotz床(哺乳床)という装置を口腔内に装着することがあります。1.5歳くらい、体重9kgを目安に全身麻酔で手術を行います。様々な手術法が存在しますが、主にFurlow変法で手術を行います。鼻咽腔閉鎖機能に関わる筋肉を剥離し、後方に移動します。筋肉を正中で縫い合わせて正常に近い状態にします。その際にZ形成術(ジグザグに縫う工夫)を行うことで軟口蓋を延長し、より強固に筋肉を縫合します。
手術後
術後早期は、口の創部の安静のため鼻から胃内に挿入した栄養チューブからミルクや流動食を注入します。その後に経口摂取を始めますが、退院後も術後約数週間はペースト食を続けます。
通常は2歳頃から、言語療法士による言語の評価・訓練を行います。
口蓋瘻孔、構音障害(発音の癖)、鼻咽腔閉鎖機能、上顎劣成長(受け口)などが生じた場合には追加の治療が必要となることがあります。
病状と手術の目的
歯茎の骨に割れ目があるため、その部位に歯が欠損している状態です。歯を並べられるようにするため、欠損部に骨を移植します。
手術の方法
欠損部近くの永久歯が萌出する前の時期(通常は学童期)を目安に全身麻酔で手術を行います。主に歯茎の粘膜を切開して、左右どちらかの腸骨から採取した骨を移植し縫合閉鎖します。腸骨を採取した部分の皮膚は縫合閉鎖します。
手術後
術後早期は、口の創部の安静のため鼻から胃内に挿入した栄養チューブから流動食を注入します。その後に経口摂取を始めますが、退院後も術後約数週間はペースト食を続けます。
移植骨の生着不良などが生じた場合には追加の治療が必要となることがあります。
★手術前後は歯科にて矯正治療を行うことが必要です。
耳が変形し、眼鏡やマスクをかけづらい状態であったり整容的に問題になったりする状態です。通常は就学前に全身麻酔で手術を行います。軽微な変形である場合は乳児期に矯正装置(綿球や樹脂など)を装着することで改善する場合もあります。
耳が欠損、もしくは著しく低形成(とても小さい)の状態です。主に胸から肋軟骨を3本採取し、次回のフレームワーク(骨組み)を作成し、側頭部の皮下に埋め込んで耳介を形成します。程度にもよりますが、手術はエキスパンダー(組織拡張器)を挿入し側頭部の皮膚を伸ばす手術、肋軟骨を埋め込む手術、耳介を聳立させる(立てる)手術など複数回必要となります。
主に学童後期以降、胸囲60cm以上を目安に手術が可能です。通常は一連の手術を約1年かけて行います。